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2023年8月25日企業のM&Aでは欠かせない調査である「法務デューデリジェンス」。M&Aを成功に導くための重要な調査である法務デューデリジェンスについて、内容や目的、チェック項目などを解説していきます。
デューデリジェンスの意味
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、M&Aを行うにあたって実施される調査のこと。買収する側の企業が売り手側企業について、契約の際に実態を事前調査することを意味します。デューデリジェンスの種類や内容など、基礎知識について解説します。
デューデリジェンスとは
Due Diligence とは、Due(当然行われるべき)Diligence(義務・努力)という意味に直訳される言葉で、「DD」「デューデリ」と略され、日本語では「買収監査」ともいわれています。M&Aを行うにあたり、価格や取引に関して適切な判断を下すために、売却対象企業の財務・営業状況、IT環境などさまざまな角度から徹底的に調査します。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスには複数の種類があります。主なデューデリジェンスの特徴や違いについてご紹介します。
・セルサイドデューデリジェンス
デューデリジェンスは一般的に買主側が行うものですが、売主側が実施するものをセルサイドデューデリジェンスといいます。売却価値を最大化し、M&Aの成立まで円滑に進められるように対策をするもので、オーナー自身が自社の課題を把握でき、以降の経営に役立つのもメリットです。
・ビジネスデューデリジェンス
M&A対象企業のビジネスモデルや取引状況、技術力、競合他社の状況や市場全体におけるポテンシャルなどを確認する調査が、ビジネスデューデリジェンスです。M&A成立後の企業価値や企業を包括する市場全体を評価し、取引価格の妥当性を評価します。
・財務デューデリジェンス
対象企業の財務情報から、時価評価を行った場合の資産額はどれくらいか、決算書などが実態を表しているか、など、企業の財務面の企業価値評価を調査するのが財務デューデリジェンスです。財務状況はM&Aにおいて重要な影響を及ぼすため、買収後も見すえた調査が必要です。
・法務デューデリジェンス
対象企業が締結した契約や取引が法的に遵守されているか、事業に必要な許認可は適切に取得しているか、特許権や所有権などで訴訟対象になっていないかなど、法的リスクについて調査するのが法務デューデリジェンス。買収後の事業計画などに影響をおよぼすリスクを抱えていないか、事前に把握するのが目的です。
・人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスは、人事や労務に関する調査。M&A成立による報酬や評価システムの変更、人事制度や組織の統合により人材流出が発生するリスクを把握し、再編後も円滑に業務が継続できるか調査します。
・ITデューデリジェンス
ソフトウェアの利用やIT投資費用の状況、管理システムの統合について調査するのがITデューデリジェンス。業務とシステムの双方を理解しながらIT関連資産やIT戦略に関しての全体像を把握し、継続利用するシステムの選択やシステム移行などの計画につなげるための調査です。
法務デューデリジェンスとは
ここでは、数あるデューデリジェンスの中でも法務デューデリジェンスに注目。その重要性や目的について詳しく解説します。
法務デューデリジェンスとは
デューデリジェンスの中でも法務面を中心に実施される調査が法務デューデリジェンスです。対象企業の株主関係、組織の状況、関連会社や取引先との契約関係、資産や負債、許認可などを調査。法令遵守や訴訟リスクなど、あらゆる法的問題の有無や障害の有無を確認します。
法務デューデリジェンスの目的
法務デューデリジェンスは、買い手企業にとっては買収に関わるリスク回避のために重要なプロセス。大きな法的問題が発見された際には、M&Aを中止とする場合もあります。買収に合意する場合も、発覚した法的問題を加味した価格交渉を検討するための重要な材料となります。
法務デューデリジェンスで調査すべき主なチェック項目
次に、法務デューデリジェンスで実施される主な調査内容について紹介します。
契約についての内容
締結している個別の契約内容を確認し、不利益となる項目や法的な問題点がないかを調査します。特に、チェンジオブコントロール条項(COC条項 ※支配権の変更があった際に、契約が変更または終了する条件)には要注意。買収後の事業運営を視野に入れて調査します。
資産・負債についての内容
M&A実行後も利用することになる事業用資産を調査。資産の種類としては不動産・動産、知的財産権・金融資産・システムなどが含まれます。また負債についても、借入金の状況を把握し、M&Aにより影響を受ける条項がないかを調査します。
法令遵守についての内容
法令違反は、企業価値損失に関わる重要な事項。業務に関してだけでなく、会社法や税法、労働関係法令など、各種法令を遵守しているかを確認します。個人情報保護法や下請法も要チェック項目。
許認可についての内容
事業内容によっては、許認可の取得が必須な場合があります。M&A実施後に許認可が継承できない場合には再取得が必要となりますが、申請から取得までは一定期間を要します。スムーズに再取得できないと業務継続に影響するため、許認可が継承可能かどうかの調査は重要です。
労務についての内容
M&A実施後も雇用は引き継がれるため、未払い残業など法令違反の可能性がある場合は慎重に調査します。人事・労務に関しては人事デューデリジェンスにも関わりますが、法務デューデリジェンスでは、従業員の労働条件や退職・解雇など労働環境の問題を確認します。
法務デューデリジェンスの流れ
法務デューデリジェンスはどのように進められるのか、一般的な流れや内容について順を追って解説します。
資料開示請求
対象企業に対して法務デューデリジェンスに必要な資料の開示請求を行います。売り手企業はできるだけ高く買い取ってもらうため、自社に不利となる情報を積極的に提出することはありません。事前に必要資料のリストを作成し、項目に従って請求します。
開示資料の確認
資料が開示されたら買主側で確認と分析を行います。膨大な資料の中から内容を精査・検討し、追加で必要な資料の開示請求も行い、不明点や疑問点などはQ&Aリストを作成。インタビューなどで確認する準備を整えます。
経営陣への質疑応答・現地調査
対象企業の経営陣や従業員とインタビュー・面談を行います。業績の見通しや経営方針、会社全般に関わることなど、資料にはない情報を把握する重要な手続き。本社など現地に赴くことで、現地でしか見られない資料も確認します。
中間・最終報告会
中間報告会では、ここまでの調査での発見事項を報告し、追加調査の必要性を精査。その後の対応やM&A実施の可否を検討します。中間報告会で報告された内容をもとに、不足資料の分析や問題点を整理し、関係者間で最終報告会が行われます。