昨今の企業コンプライアンスやガバナンスの強化で、企業法務の重要性が再認識されています。それに合わせ、法務人材の需要も高まってきており、法務のスペシャリストとしてキャリアアップを目指す方や、法務業務へのジョブチェンジを狙う方も増えてきています。この記事では、企業法務担当者にとって有益な資格やスキルについて解説していきます。
企業法務で働く際に資格なしは厳しい?
企業の法務部門で働く上で必須の資格はありませんが、法律の知識や経験は重要です。法務担当者として業務上役立つ資格、特定の業界や専門分野で関連する資格が役立つ場合もあります。
資格取得に伴った法律知識を深めることで、法的問題へ適切に対応できて企業法務での業務にプラスとなったり、資格が転職や採用、キャリアアップの際に有利になったりすることはあるでしょう。
企業法務で評価される主な資格6つ
企業法務に資格は必須ではありませんが、法律の知識が求められることから、資格を持っていれば知識があることの証明になります。持っていると業務に役立ったり、キャリアアップに生かせたりと、プラスに影響することは間違いありません。ここでは、企業法務に役立つ代表的な資格をご紹介します。
弁護士
法務に関する業務全般の権限が認められる最難関の国家資格です。原則3年間の法科大学院課程を修了するか、合格率約4%の予備試験に合格すると司法試験の受験資格が得られます。合格後も約1年間の司法修習が必要です。弁護士資格は企業法務において強力な武器であり、法律事務所ではなく企業に就職する司法修習生も増えています。
司法書士
不動産や法人の登記など、裁判所や法務局に提出する書類の作成代行ができる国家資格。司法書士試験の合格率は約3~5%台と非常に低く、司法試験に次ぐ難関です。司法書士事務所や総合型の法律事務所で資格を活かす場合が多く、企業内司法書士は一般的ではありませんが、不動産業界など一部の業界の法務部では重宝される資格です。
弁理士
特許や実用新案などを出願して登録するなど、知的財産の専門家が弁理士です。企業法務との相性がよく、特に大企業やメーカーなど、知財や海外案件を扱う企業で評価されやすい資格で、今後さらに需要が高まることが予想されます。
行政書士
許認可の申請など役所への提出書類の手続代理、事実証明及び契約書の作成などができる国家資格です。試験の合格率は近年10%前後で、取得後に開業するケースが多い資格ですが、契約書の作成やレビューが代表的な業務のひとつである企業法務においても、法律の知識があることの裏付けになります。
個人情報保護士
個人情報の適切な管理や運用方法を身につけることができます。全日本情報学習振興協会が主催する検定で、個人情報保護法やマイナンバー法、情報セキュリティに特化した問題が出題されて合格率は約40%。個人情報を慎重に取り扱わなければいけない現在において、企業法務においても学ぶ価値が高い資格といえるでしょう。
ビジネス実務法務検定
企業法務に関係する検定として広く知られるのが「ビジネス実務法務検定」です。3級から1級まで段階的に取得でき、ビジネスに特化した法務知識を習得して契約や労務、知的財産などの実務スキルを高めることで、法的リスクの軽減や業務効率の向上につなげられます。
ビジネスコンプライアンス検定
ビジネスにおけるコンプライアンスの知識を習得できる検定です。民間資格で、初級・上級を合わせた合格率は約50%です。不祥事や不正で社会的信用を失う企業が後を絶たない現在、企業法務として備えておくべき知識といえます。
企業法務の業務における3つの役割
企業法務における3つの役割である「臨床法務」「予防法務」「戦略法務」について解説します。
臨床法務の役割と主な仕事
臨床法務とは、法的紛争・トラブルを対処する法務のこと。治療法務や紛争法務などとも呼ばれます。主な仕事としては示談交渉や訴訟対応です。契約トラブルや労務問題、クレーム対応などが発生すると、企業は大きな損害を被るリスクを負います。対応が長引くほど労力や費用を要するため、迅速に解決して損害を最小限に食い止めることが求められます。
予防法務の役割と主な仕事
予防法務とは、法的紛争・トラブルを防止する法務のこと。リーガルリスク法務とも呼ばれます。主な仕事としては契約書の作成やレビュー、株主総会の対応などが挙げられます。臨床法務が起きてしまってからの対処であるのに対して、予防法務はトラブルを未然に回避すること、もし発生した場合も被害を最小限に抑えることを目的としています。
戦略法務の役割と主な仕事
戦略法務とは、企業価値や利益を最大限に高めるために行う法務のこと。主な仕事としては新規事業における許認可の取得や、企業間のM&A(合併・買収)対応などが挙げられます。法的紛争・トラブルが起きないようにするという点は予防法務と似ていますが、予防法務が「守り」の法務であるのに対して、戦略法務は「攻め」の法務であるといえます。
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企業法務の主な業務内容
企業法務の担当者が関わる、主な業務について解説していきます。
取引先との契約書などを確認する業務
法務部の業務で多いのは、売買契約や秘密保持契約、業務委託契約などの文書を作成・確認する業務です。国内の契約だけでなく、会社によっては海外との契約事項の確認も行います。
トラブルに対応する業務
取引先や顧客との間に発生した法的紛争に対応します。訴訟に発展した場合には法律事務所の弁護士と協議・連携し、証拠の収集や裁判準備などを行います。
コンプライアンス関連の業務
コンプライアンス関連業務も法務部の業務です。不正会計や品質問題、ハラスメントなどを予防・対処できるよう、社内研修や相談窓口の設置、社内規定の整備・周知による徹底を行います。
法律に関する社内相談窓口業務
新規事業における法的リスクや経営判断の是非など、社内における法律の相談窓口となるのも法務部の役割です。会社の業務内容の把握と法律の知識、両方が必要とされる業務です。
会社の経営戦略に関する業務
M&Aやグループ再編、新規事業の立ち上げや海外展開など、会社の重要な意思決定において、各種法律と照らし合わせながら自社にとって有利な戦略へと導くのも法務の業務です。
企業の法的手続き業務
子会社の設立や株式の発行・分割など、企業経営において必要な法的手続きを税理士や経営陣と相談しながら行う業務です。
株主総会などの準備・サポート業務
株主総会や取締役会などの会社の内部機関の活動を、法律に基づいて適切に準備・運営する業務です。
法令調査に関する業務
法令は、社会情勢に応じて度々改正が行われます。対応が遅れてリスクが生じないように、法改正の自社への影響を常に調査・検討、社内通知します。また、海外進出の際は現地の法令調査を行う必要もあります。
債権の回収や管理に関わる業務
自社の債権を管理し、未払いがあれば回収する業務です。債権未回収は企業の収益悪化に直結するので、内容証明郵便による催告、最終的には支払督促や訴訟などの法的手続、担保を取るなど速やかで適切な対応を行う必要があります。
労務・労働問題に関する業務
勤怠管理や就業規則の作成・運用など、労務・労働に関する業務も存在します。労働基準法などの法令に沿った規則の制定の他、未払い残業代のような労働紛争やハラスメント対応のような労務関連のトラブル対応も担当します。
企業法務に求められる代表的なスキル
企業法務で働く上で必要なスキルについて解説します。
法律の専門知識
法務は法律に関する業務全般を管理する職務なので、法律の専門知識は必要不可欠です。さらにその企業が属する業界についての法律はとくに深く理解することも、企業法務を行う上で重要なスキルです。
コミュニケーションスキル
意外に思われるかもしれませんが、法務には高いコミュニケーションスキルも必要です。社内の法律相談窓口となるため、相手から必要な情報を聞き取れなければ的確なアドバイスができませんし、法的紛争が発生した際は相手先企業と柔軟な交渉をする必要もあります。
調査力
企業活動に関わる法令は非常に多く存在するため、前提として法律を読み解く力や土台となる法律の知識はもちろんですが、それだけでなく、その時々の問題に適した法律や判例を調べるための調査力が必要になります。
向上心
法務の知識は、学んで終わりというわけではありません。新たに制定された法律や度重なる改正に応じて仕事を変えていく必要があります。得た知識を常にアップデートして業務をブラッシュアップしていく、学び続ける向上心も重要な資質のひとつといえます。
企業法務としてのスキルアップの方法
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