eディスカバリ(eDiscovery)とは? 対策の必要性やリスクなどを解説
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2023年6月14日グローバルにビジネスを展開する日本企業が備えておかなければならないのが、米国訴訟のリスクです。訴訟が頻発するアメリカにおいては他人事ではなく、慣れない訴訟に慌てている間に巨額の賠償金で企業が追い込まれていた……という事態にもなりかねません。日本とは異なる法制度や訴訟の流れ、アメリカでの訴訟への備えと具体的な手順についてご紹介します。
日本企業にリスクのある米国訴訟の要因とは
まず知っておきたいのは、日本企業が米国訴訟を起こされる可能性やリスク、その要因についてです。アメリカで訴訟となる主な要因としては、次のような例が挙げられます。
日本企業が米国市場で販売する製品に関して不具合や事故・欠陥などが発生した場合に、共同で訴訟を起こされる「集団訴訟(クラスアクション)」。市場の独占や合法的な競争原則に反する行為に対して法的な制裁が科される「国際カルテル違反疑い」。ほかにも、技術や製品など、米国における特許や商標、著作権など知的財産権を侵害したと主張される「知的財産権侵害訴訟」、環境汚染や環境規制に違反したとされる場合に環境保護団体や地元住民から「環境問題訴訟」 を起こされる可能性などもあります。
日米の訴訟の違いと米国訴訟の流れ
日本とは大きく違う米国訴訟。米国における民事訴訟の一連の流れを紹介しながら、日米の違いについて説明します。
日本と米国の民事訴訟制度の違い
日本と米国の民事訴訟制度では、重要な違いがいくつかあります。大きく異なる点としては
- 「ディスカバリ」制度
- 陪審員制度
- 損害賠償額
- 集団訴訟
などが挙げられます。
米国訴訟で避けて通れないのが「ディスカバリ」とよばれる、証拠提出に関わる手続きです。米国では相手方から証拠開示を求め、当事者が相手方および第三者から証拠を入手するところからスタートします。日本の民事訴訟制度では裁判官がすべての判決を下すのが一般的ですが、米国では陪審員が賠償の有無などを判定する「陪審員制度」があります。
米国の訴訟手続きは複雑で時間がかかることが多く長期化傾向にあること、損害賠償額に関しても、比較的控えめな日本の民事訴訟に対して、米国では莫大な額になる場合が多いのも特徴です。上記でも述べたとおり、大勢の被害者が共通の被害を受けた場合に、集団訴訟(クラスアクション)となることも珍しくありません。
米国民事訴訟の流れ
アメリカの民事訴訟の流れは、州法や連邦法によって異なる場合がありますが、一般的な例を簡単にご説明します。
被害者(原告)が裁判所に訴訟を提起することで民事訴訟がはじまります。裁判所は訴状を被告に通知。被告は反論など回答を行います。ここから当事者の訴訟準備がスタート。証拠の開示や収集、証人のピックアップなどが行われ、公判に備えます。訴訟中に当事者間で合意が成立すれば和解が成立しますが、和解に至らない場合は公判が開催され、公判後、裁判官が判決を下す流れになります。
米国特有の訴訟手続き「ディスカバリ」とは
米国訴訟では「ディスカバリ」という特有の手続きがあります。アメリカでは重要視されている手続きですが、その対策が難しく、米国訴訟の危険性がある日本企業の大きな課題となっています。
ディスカバリは公判前の証拠開示手続き
「ディスカバリ」とはアメリカの米国の訴訟において、証拠や情報の交換を行う手続きのこと。相手方の当事者に対する関連情報や資料の開示、開示の要求、証言録取などを行います。
公判のために必要な証拠として、利用する可能性がある文書や記録などを相手に提供。互いに証拠を開示し真実を追求することによって、訴訟を公平かつ効率的に行うために重要な要素とされるのがディスカバリです。
莫大な時間とコストがかかり、対策不備で巨額賠償の可能性も
ディスカバリは場合によっては弁護士費用の大半を占めることにもなるほど、多額のコストがかかると言われています。準備不足のために敗訴することになれば、経営に重大な影響をもたらす巨額の賠償金を支払わなければならない可能性もあり、不利な条件での和解を受け入れるしかなかったという例もあります。ゆえにディスカバリは重要なステップであり、米国訴訟の勝敗を分ける重要なポイントと言われています。
電子データの証拠開示請求「eディスカバリ」
多くの文書が電子データで作成・保存されるようになったことで、電子データを訴訟の証拠として取り扱う必要が出てきました。この電子データの証拠開示や請求に関する手続きおよびプロセスのことを「eディスカバリ」といいます。2006年に米国連邦民事訴訟規則が改正され、「eディスカバリ」という電子データのディスカバリが定められたことで、膨大な電子データが対象となり、作業負担とコストはますます増加傾向にあります。
電子データは、Eメール、テキストファイル、各種社内文書、メッセージのチャット、表計算ソフト、画像データ、Webサイトの内容など、提出を合意したすべてのデータが対象となります。提出対象となるデータが改ざん、破棄されないように保全。そのなかから必要と思われるデータを収集して、合意した形式に変換。提出に合意した文章を見つけ出すレビューと分析が必要になります。
eディスカバリ実施のワークフロー「EDRM」
このeディスカバリを実施するにあたり、そのプロセスを理解し、管理するための世界標準のワークフローが「EDRM」です。EDRMとは、「The Electronic Discovery Reference Model」の略で、「電子情報開示参考モデル」のこと。次は「EDRM」について掘り下げていきましょう。
EDRMとは
「EDRM」は、eディスカバリを実施における一般的な手順と作業内容を示すもので、米国で広く使用されているワークフローです。案件によって具体的な作業は異なりますが、eディスカバリを正確に効率的に行うための重要な枠組み。世界基準の作業指標となっていますが、膨大な知識やプロセスが必要になります。
EDRMのプロセスと作業内容
IT系から法務系まで広範囲におよぶ作業となるEDRMは、「情報統制」からスタートします。データが適切な場所に分類・格納されていて、統制がとれているか否かが、実際のeディスカバリに大きく影響します。
管理されている情報の中からeディスカバリの対象となるデータの範囲を特定し、破棄されたりしないように保全しながら、特定のデータを収集。収集されたデータは重複データを削除するなどふるいにかけます。無関係なデータを外し、開示対象になり得るデータに絞ったうえで、最終的に担当弁護士が開示すべきかどうか判断し、指定された形式で提出されます。
eディスカバリ調査・準備で膨大なコストがかかる
このプロセスからも分かるように、eディスカバリには、膨大な内容の作業が伴い、専門知識も必要になります。準備段階から含めると多大なコストがかかりますが、米国訴訟においては避けて通ることが不可能な重要なステップです。
米国訴訟リスクへの事前の備えが大切
現段階ではアメリカでの訴訟の可能性が低い日本企業であっても、有事の際に慌てないために備えておくことが重要になります。ここでは米国訴訟のリスク回避のコツについてご紹介していきます。
ディスカバリを意識した電子メールの管理
訴訟リスクへの備えは、ディスカバリを意識して行うことがポイント。特にeディスカバリで重要になるEメールは、日本では長期間、削除せずに残す企業文化が根強く残っています。膨大なEメールの処理のために訴訟費用が高騰したり、相手方に有利な証拠を提示することにもなりかねません。とはいえ、文書の保全義務が生じた後に証拠となりうるEメールを削除してしまうと、違反として厳しい制裁が科されるので、日ごろからメールの管理を徹底する心構えが必要といえます。
米国訴訟に精通した弁護士と関係構築しておく
米国訴訟に限らず、弁護士の優劣が裁判の結果に大きな影響を与えます。日本と米国の法制度の違いを正確に理解し、ノウハウを持つ弁護チームも確保しておきたいところ。リスクへの備えはもちろん、訴状が届いた際に迅速なサポートが受けられる関係を構築しておく必要があります。訴訟のスタートが出遅れると、不利な状況に陥りやすくなるためです。
事前にeディスカバリのノウハウを持つサービスベンダーに相談しておく
訴訟が頻発する米国でのリスクを軽減するには、訴状が届く前に、起こりうる可能性をシミュレーションするなど事前の備えが肝心です。日本企業はディスカバリに関する知識が米国企業と比べて不足していることに加え、米国訴訟への不慣れが初速の遅れにつながりかねません。平時より、適切なソリューションを導入しているサービスベンダーに相談しておくのが賢い選択だといえるでしょう。
米国訴訟対策なら、AIを用いたeディスカバリ経験が豊富な「FRONTEO」
米国での訴訟への備えには、eディスカバリのノウハウを持つベンダーを利用するのが近道です。「FRONTEO」は、8,500件以上のディスカバリ対応実績をもつアジアのeディスカバリのパイオニア。AIエンジン「KIBIT」を自社開発し、データの特定からレビュー・作成までのワンストップでサービスを提供、eディスカバリにかかるコストと時間を削減し、多くの企業を支援しています。「KIBIT」は高精度かつ軽い計算処理で動作するため早期実装でき、企業ごとの独自システムや特殊データにも柔軟にカスタマイズできます。
米国訴訟の肝となるeディスカバリにおいて、素早く正確に対応できれば、企業へのダメージを最小限に抑えられます。自社に不利になった場合の巨額の損害賠償に陥らないためにも、訴訟への備えは必要な先行投資だといえるでしょう。
グローバル化が進む現代、日本企業においてもアメリカでの訴訟は、他人事ではありません。「FRONTEO」の支援サービスを活用して、リスクへの備えをはじめませんか。