不正会計とは?不正の事例や原因、防止対策と調査対応まで解説

2023年08月23日配信

社内で起きる不正会計は、企業に深刻な経済的損失や信用の失墜をもたらします。この記事では、不正会計の定義やリスク、未然に防ぐための予防策、そして発生してしまった場合に有効な調査対応を解説します。

不正会計とは?不正の事例や原因、防止対策と調査対応まで解説

不正会計の定義や粉飾決算・不適切会計との違い

そもそも不正会計とは何か、どうして起きてしまうのか。基本的な定義や問題点を解説します。

不正会計とは何か?

不正会計とは、企業が作成する財務情報を意図的に改ざんすること。架空の売上や経費を計上したり、適切な経営状態の把握に必要な情報を隠蔽したりして、財務状況を偽る行為を指します。

不適切会計・粉飾決算との違い

不正会計と似ている言葉に、不適切会計や粉飾決算があります。不適切会計は、担当者のミスや知識不足といったヒューマンエラーが含まれ、意図的か否かは問わない点が不正会計との違いです。

粉飾決算は、意図的に財務状況を改ざんする点は不正会計と同じですが、実状よりも経営状況を良いように見せかける行為のみを指す点が違います。逆に利益が出ていないように見せかける行為は、逆粉飾決算と呼ばれます。

不正会計が生じる背景と原因

不正会計をしてしまう動機として多いのは経営不信の隠蔽です。金融機関から有利な条件で融資が受けられなくなったり、株主から責任を追及されたりする事を避けるため、経営状態が良いように見せかけます。

逆に利益が出ていないように改ざんする理由は、納税額を減らすためです。売上を減らしたり経費を水増ししたりすることで利益が減少しているように見せかけます。

これらの動機が、監視体制の不備などによって発生した不正が行える環境や、どの会社もやっていることだなどと正当化する倫理観と結びつくことで、不正会計がなされてしまうのです。

不正会計による企業へのリスクと影響

不正会計を行った場合、刑事責任や民事責任が生じることがあります。刑事責任としては、詐欺罪や違法配当罪に問われる可能性があります。民事責任としては、虚偽の財務状況に対して融資させられた銀行や、株価が暴落してしまった株主など、被害を与えた第三者から損害賠償を請求される可能性もあります。

ミスや勘違いで納める税金を少なく申告すると過少申告加算税が課されますが、不正会計のように悪意を持った脱税が認められた場合、さらに税率の高い重加算税が課せられます。

経済的損失だけでなく、違法行為が行われた会社として社会的な信用は失墜。銀行などからの融資を受けられないなど、企業の存続そのものを脅かす事態にも発展しかねません。

実際に日本の上場企業で起きた不正会計の事例

実際にどのような不正会計が行われているのか。金融庁公表の資料から事例を紹介します。

子会社による売上の過大計上等(東証一部、サービス業)

コピー機などの販売・保守会社のA社(C社の子会社)と、機器レンタル業のB社は、B社が店舗にコピー機等を設置し、その代金をA社に支払う契約でした。しかしA社は、B社へのレンタル料金の補填を前提に、店舗への設置を偽装して架空売上を計上。その他、未売上の架空計上、仕入れの未計上による売上原価の過小計上の不正会計も行われていました。

これによりA社の親会社であるC社は、過度な当期純利益などを計上。証券取引等監視委員会は課徴金額3565万円の課徴金納付命令勧告を行いました。

C社の子会社に対するガバナンス機能に不備があったこと、ビジネスモデルの理解不足、予算実績管理に偏重していたことが原因とされています。

売上の過大計上(東証二部、アウトソーシングサービス業)

受託でコールセンター業務を行うD社が、欠勤しているオペレーターが出勤しているように装うことで稼働時間の水増しを実施。取引先に対して過大に請求することで、売上を過大計上しました。監視委は課徴金額1200万円の課徴金納付命令勧告を行いました。

コールセンターにおいて、日常的な業務運営について定めた「運用管理ルール」を遵守する意識が欠如していたこと、また管理部門も現場責任者から渡された不正なデータを鵜呑みにして売上の請求を行っていたことなどが原因とされています。

売上原価の過少計上等(東証一部、電気機器業)

E社において、強い影響力を持っていた当時の経理担当者の指示のもと、架空の期末在庫の計上による売上原価の過少計上など、長期間・多岐にわたる多額の不正な会計処理を行い、過大な当期純利益・純資産などを計上していました。監視委は課徴金額21億6333万4996円の課徴金納付命令勧告を行いました。

一人の担当者に経理実務の権限が集中していたこと、適切な会計処理を重視しない企業風土があったこと、そして社内のチェック機能が不全であったことが原因とされています。

(出典:金融庁「開示検査事例集」https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20210730/1.pdf )

不正会計を防ぐための対策

不正会計を防ぐにはどうしたらいいのか。企業がとるべき対策について解説します。

内部統制システムの強化とその重要性

社内の監視体制の強化は非常に重要です。一人の担当者に権限を集中させず、役割分担して取引や契約内容を相互にチェックする体制を整備します。監視体制として監査部署を設けるのも有効です。その際、監査部署はたとえ対象が役員でも制限なく調査できる権限をもつ、会社から独立した調査体制である必要があります。

内部告発・内部通報制度の整備

内部通報制度とは、企業内における違法行為などの通報を促すため、役員・従業員などに向けた通報窓口を設置する制度です。不正会計は発覚が遅れるほど常習化して、規模も大きくなっていきます。社内に内部通報制度があれば、それだけで不正の抑止力になり、早期発見にもつながります。その際、通報者が安心して通報できるよう、通報者の保護も含めた制度整備を行いましょう。

経営者と従業員へのコンプライアンス教育、不正を許さない風土の醸成

経営者や従業員に対するコンプライアンス研修も有効です。不正会計は犯罪行為であり、刑法に問われて罰を受けるということを自覚させることが抑止力につながります。企業の経営的にも大打撃となることを知らしめることで、社員からの内部通報を促すことにもなります。不正行為は許されないという意識を会社全体に浸透させ、相談窓口や告発先についても周知しましょう。

外部専門家への相談体制の整備・強化

もし不審な点が見つかった場合には徹底的に調査される、という認識が社員にあれば、不正の抑止力にもつながります。金銭や取引に関するデータを収集・分析するフォレンジック調査を行える調査会社に何かあればすぐ連携できるよう、平時から相談しておくことも有効です。

 

 →【関連記事】 内部通報制度(公益通報制度)とは?導入メリットや対応の流れを解説 

 

不正会計調査には「フォレンジック調査」が欠かせない

不正会計の疑いがある場合、専門の調査会社によるフォレンジック調査が有効です。どのような調査なのか、どういう効果があるのか、詳細を解説します。

フォレンジック調査とは何か?

事案に関連する情報を収集・分析して、犯罪や不正行為の証拠を明らかにする鑑識調査のことです。原因を究明することで再発防止策が立てられますし、責任の所在を明らかにすることで、訴訟に発展した場合に備えることができます。

なぜデジタルフォレンジック調査が不正会計調査に有効か

デジタルフォレンジックは、法科学の分野のひとつで、犯罪や不正行為の証拠を明らかにするために、デジタルデバイスに保存されているデータを収集・分析する調査のことです。不正会計が疑われる場合、隠蔽されている裏取引やお金の動きなどの証拠を見つけなければいけません。不正の証拠は書類だけでなく、メールやチャットなど電子データにもよるものも多いため、それらを分析するデジタルフォレンジックが有効です。

財務データや文書、メールやチャット、通話記録などの証拠保全が必要

ドキュメントや電子メール、チャットや通話履歴などがすでに削除されている場合は、バックアップから復元するか、データを修復する必要があります。デジタルフォレンジック調査を専門とする調査会社の専門的な技術や知識が必要です。

AIを活用した効率的なフォレンジック調査

膨大なデータ量を扱う現代のフォレンジック調査において、AI(人工知能)の活用は必須ツールです。大量のデータ分析を得意とするAIを活用することで、調査の効率化だけでなく、専門家がリソースを集中できることで調査の精度も高められます。

 

→【関連記事】 フォレンジック調査とは?必要なケースや注意点、事例について解説

不正会計の調査を依頼する際の注意点

専門の調査会社に不正会計のフォレンジック調査を依頼する際の重要なポイントと選択基準を解説します。

フォレンジック調査会社選びのポイント

調査会社を選ぶ際は、調査会社が使っているツールや技術力、そして過去の調査実績がポイント。調査会社の設備やエンジニアの熟練度などによって調査の成果は変わります。特にデータの復元には専門のツールや高度な技術力が必要です。AIの活用も重要なポイントです。

多数の調査実績を持つ会社ほど、高い技術力やデータ復旧に関するノウハウが蓄積しているので、ケースごとに適切な方法を選択して適正なコストで対応できるでしょう。特に上場企業や警察、官公庁などの依頼実績があるかどうかが、信頼性を判断する上で重要なポイントになります。

依頼時の費用とその見極め方

フォレンジック調査には、高いレベルの専門性が求められます。フォレンジック調査をベンダーに依頼した場合、データ処理や検索の費用、そして証拠となり得るかの分析・解析(レビュー)やデータホスティングなどが費用の内訳となりますが、通常はレビューの工程が費用の大半を占めます。最終的な金額は調査範囲、調査内容によって大きく変わり、数万円~数百万円とかなり幅があります。

なお調査にAIを用いることの認知も最近では広がってきており、AIを活用して調査を飛躍的に効率化することで大幅なコストメリットが得られます。見積を集める際には必ずAIやレビューも含めたトータルの費用も求め、単価だけでなく全体の費用もしっかり比較しましょう。

不正会計調査は、フォレンジック調査のリーディングカンパニー「FRONTEO」にお任せください

不正調査で豊富な調査実績を誇るFRONTEOは、スピーディーにインシデントに対応し、解決に導く提案力・調査力が強みです。

昨今のフォレンジック調査は、膨大なデジタルデータを取り扱うため、AI(人工知能)の活用が不可欠ですが、FRONTEOでは自社開発のAIエンジンを駆使して大量のデータを迅速に処理します。さまざまなケースに対応できるよう自社開発ソフトウェアも導入し、迅速でコストパフォーマンスの高いフォレンジック調査を実現します。

圧倒的な件数から得た知見を活かし、難易度が高い調査への対応力も万全で、有事の際は迅速に対応。被害を最小限に抑え、再発防止に努めます。

 

フォレンジック調査のご相談・お問い合わせはこちら

 

→ 「FRONTEO」のフォレンジック調査サービスのページ

 

 →【関連記事】 社内不正調査とは?よくある不正の手口や対応方法、調査事例について紹介