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2023年6月30日日本でビジネスを行っている日本企業だからといって、米国訴訟と無縁とは限りません。企業の法務担当者がアメリカで訴訟を起こされたときに重要になるのが「ディスカバリ(Discovery)」というプロセスです。その中でも電子データを対象とした「eディスカバリ(eDiscovery)」を行う際のワークフローが「EDRM(電子情報開示参考モデル)。この記事では「eディスカバリ(eDiscovery)」の説明も含め、EDRMとはどういったワークフローなのかを解説していきます。
「EDRM」とは?
まずは米国訴訟について簡単に説明します。アメリカの訴訟では、公判の前に当事者同士で話し合いの場を持つことが要求されます。このときに行われるのが米国訴訟の大きな特徴である「ディスカバリ」という証拠開示手続きで、とくに電子データを対象にしたものを「eディスカバリ」と呼びます。IT化の進んだ現代では、eディスカバリが占める割合は非常に大きくなっています。
アメリカでの訴訟はディスカバリによって、ほとんどの事案が公判前に終結します。その大半を占めるeディスカバリは訴訟の行方を左右する重要な手続きなのです。そのeディスカバリを行う際のワークフローが「EDRM」。EDRMとは、Electronic Discovery Reference Modelの略で「電子情報開示参考モデル」を意味し、世界標準のワークフローです。
eディスカバリの対象となる電子データはEメールだけでなく、データベースや社内アプリケーション、ウェブサイトのコンテンツなど、あらゆる電子情報から得られるデータが含まれます。なお、提出するデータの範囲やその形式は、当事者間(またはその代理人弁護士間)で決めて合意します。
膨大なデータから開示すべきデータを探し出すには作業時間や費用がかかり、誤って消去したり開示し忘れた場合は隠蔽を疑われてしまいます。ディスカバリにおける電子データの扱いを合理的に行うために策定されてきた歴史をもつEDRMは、世界の司法関係者の共通言語のようなものであり、このワークフローに沿った対応を取ることが訴訟解決への早道となるでしょう。
EDRMのプロセスと作業内容
EDRMは6つのフェーズ、合計で9つの項目によって構成されたワークフローです。
情報ガバナンス(Information Governance)
最初のフェーズは「情報ガバナンス」、すなわち電子情報の適切な統制です。企業によっては、Eメールや各種ドキュメントやコンテンツのアーカイブを一元的に管理せず、個人ごとにバラバラ、属人的に管理しているケースもみられます。
現状、どのようにデータが扱われているのかを明確にし、それをどう分類するかのポリシーを制定して正しく管理するのが望ましいといえます。日々の適切なデータ管理は、米国訴訟におけるeディスカバリ対策だけでなく、企業のコンプライアンスなどを効果的かつ確実に実現する第一歩にもなります。
特定(Identification)
続いては、eディスカバリの対象となるデータの場所を「特定」するフェーズです。開示すべきデータは訴訟により異なりますが、対象となりうるデータは通常膨大な量であり、その訴訟で開示対象となる情報の範囲と、どこに何が保存されているかを把握するところから始める必要があります。この後の重要なフローである「保全」を速やかに始めるためにも、なるべく早い段階で訴訟と関連する可能性があるデータの範囲を、法務担当者や担当弁護士、訴訟当事者、IT管理者らとともに設定します。
保全(Preservation)
3番目のフェーズは2つの項目があり、1つは「保全」です。訴訟が発生すると判明した時点、あるいは発生が予測できる時点以降、関連データは保全しなければなりません。特定したデータが不適切に改ざんされたり、破棄・削除されたりしないように保護します。
実際に、日本の某製薬会社が米国訴訟においてeディスカバリで要求された情報を破棄していたことから証拠隠滅を疑われ、約6200億円という巨額の賠償金を請求される事態に陥りました。そんな取り返しのつかない事態を招かないためにも、関連データの速やかな保全、そのための前段階である特定、ひいては平時からの情報ガバナンスが必須といえるでしょう。
収集(Collection)
電子データの場合は通常、「収集」すれば同時に「保全」された状態になります。社内のファイルサーバだけでなく、スタッフが使用しているPCやスマートフォンだけに保管されているデータやコンテンツもありうるので、こういった情報の保全と収集は、早期に広い範囲で実施を済ませておきます。
処理(Processing)
「処理」では、前のフェーズで保全・収集した膨大なデータから、必要な可能性のあるデータを選り分けてデータの全体量を減らします。具体的にはたとえば、訴訟に明らかに関係のないプログラムファイルなどを除外したり、メールサーバの重複ファイルを削除したりします。ここで用いるノウハウがディスカバリ全体の結果とコストを左右するため、eディスカバリの一連の作業の中でも最も重要な工程の一つといえます。
分析(Analysis)
処理を終えたデータに対し、訴訟に関連するキーワードをもとに高度なキーワード検索を行い、対象データを特定、抽出していく作業が「分析」です。このとき、資料データが日本語であれば、日本語文字コードに対応できる精度の高い検索技術を用いて適切なデータを抽出することで、ディスカバリの費用を大幅に削減できます。この分析作業で得られたデータは、次工程である人の手による「閲覧」へ移ります。
閲覧(Review)
「処理」でより分けられ、「分析」で抽出されたデータを、開示すべきデータとそうでないデータに選別していく作業が「閲覧(レビュー)」です。ここで専門家たちの目視により、データを分類し、最終的に弁護士が証拠として提出するデータを特定していきます。人数と期間を要することから相応の作業コストを見積もるべきで、多くの場合、eディスカバリにかかる費用の大多数を占めます。英語への翻訳対応が必要になる場合はこのフェーズで対応します。
作成(Production)
5つめのフェーズが「作成」です。開示対象として確定したデータを、仕様に沿って適切なフォーマットに変換・加工します。
プレゼンテーション(提出:Presentation)
最後のフェーズが「プレゼンテーション(提出)」です。公聴会や公判などの場に、自社の立場や主張を納得してもらうための裏付けの資料を提出します。
自社単独でのEDRM対応の難しさ
EDRMのワークフローのうち、保全・収集までは、IT管理者や情報システムの担当者によって、担当弁護士とともに実施することも技術的には可能で、実際にそうした対応をする案件もあります。ただし、訴訟の内容によって条件や状況は千差万別であり、訴訟に適切に早期に対応するためにも、初期工程からeディスカバリ支援サービスを提供するベンダーへ相談し、依頼する方が後々の懸念を減らせるでしょう。
専門知識や技術、ノウハウを持つベンダーに依頼するのがおすすめ
対象となるデータは、メールだけでなくメッセージやオンライン文書、コンテンツなど、開示対象となるデータの範囲は広く、膨大な量になります。EDRMは対象データの保全・収集だけでなく、開示すべきデータかどうかを審査することも重要なプロセスです。専門的な知識、技術力を持ったベンダーへの依頼が現実的です。
eディスカバリ支援サービス会社の選び方とポイント
eディスカバリ対策を任せられる、信頼できるサービスベンダーの探し方を紹介します。
ポイント1 eディスカバリ領域の知見とカバー範囲
国内外を問わず、どのような企業の、どのような案件を手がけたかを確認。手がけた実績数がそのままノウハウとなり、低コストで高品質な支援につながります。
ポイント2 日本企業のeディスカバリ経験
eディスカバリは米国の制度だから米国で実績のあるベンダーの方が有利なのではと思うかもしれませんが、むしろ日本の組織や企業の慣習、ワークスタイルなどに対して十分な理解を持っているベンダーの方がスムーズです。
ポイント3 AI(人工知能)を含むテクノロジーの適用力
eディスカバリにおいて、最も作業時間や費用がかかるのは、データを閲覧するプロセスです。案件に関係する可能性がある文書を特定してくれるソフトウェアを用いたり、検索や抽出を高速かつ的確に行えるAIなどを駆使したりすることで、かつては数百人で数週間かかっていた作業を圧倒的に効率化でき、コストも大幅に削減できます。
ポイント4 データ保護対策
eディスカバリでは翻訳が必要になる場合が多いため、もしも翻訳の仲介会社が個人の翻訳者などに委託する際のセキュリティ体制に不備があった場合、情報漏洩のリスクが考えられます。データ保護の体制は確認しましょう。また、国外へのデータ流出を避けるためにも、国内にデータを保持したままワークフローを進められるベンダーかどうかもチェックしましょう。
ポイント5 顧客対応とサポートの充実度
日本とアメリカとの間には時差があります。メールを送っても返信は12時間後、電話をかけてもつながらない、というサービスベンダーではきめ細かい対応は期待できません。グローバル対応が可能か、スピーディなサービス提供がされているかどうかも重要な判断材料です。
EDRMを含むeディスカバリ支援なら、AIを活用した国際訴訟経験が豊富な「FRONTEO」
FRONTEOのeディスカバリ支援サービスは、世界標準のワークフローであるEDRMの全プロセスにワンストップで対応します。アジアにおけるeディスカバリ支援企業のパイオニアとして約20年間の案件対応で培った技術・ノウハウを持ち、クライアント企業の担当部門が効率よく電子証拠を収集・抽出・閲覧して弁護士とやり取りするためのソリューションを提供します。
AI(人工知能)を活用した効率的なソリューションを提供
自社開発したAI(人工知能)エンジンKIBITを用いたソリューションで、平時の情報ガバナンスやEDRMの要である「処理」「分析」「閲覧」を効率的にカバー。とくに、eディスカバリの費用の大多数を占めると言われている「閲覧」で威力を発揮。独自のアルゴリズムで、大幅な効率化とコストの削減を実現しています。
FRONTEOのAIエンジンは、様々なシステムや特殊データにも柔軟に対応します。海外ツールでは対応が難しい日本語や韓国語、中国語などに代表されるマルチバイト文字の困難な区切り位置の特定、日本独自の特殊な文字コード、複数のメーラーの同時利用などへの対応が可能です。 また、日本、北米、韓国、台湾にデータセンターを構え、データを国外に持ち出すことなく保管できる体制でセキュリティ対策も万全です。