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2023年6月6日米国訴訟のリスクとは?訴訟の流れや必要な備えについて解説
2023年6月9日主に日本国内でビジネスを行っている日本企業だからといって、米国訴訟と無縁とは限りません。ある程度グローバルな取引を行っている企業の法務担当者は、アメリカ国内での訴訟に対する備えをしておく必要があります。米国で訴訟を起こされたとき、重要になるのが「eディスカバリ(eDiscovery)」です。日本には同様の制度がないため、詳細について把握しづらいものがあります。この記事では、eディスカバリとはどのような制度なのかという基礎知識から、米国での導入背景や現状、そして対策や支援サービスについてご紹介します。
eディスカバリ(eDiscovery)とは、米国訴訟における電子証拠開示のこと
eディスカバリとは、アメリカの訴訟における電子証拠開示のことです。米国訴訟では、事件に関連する文書や資料などの情報を、原告・被告ともに開示する義務があります。
この証拠開示をディスカバリ(Discovery)と呼びますが、2006年の連邦民事訴訟規則改定により、書類だけでなくメールなどの電子データも提出の対象になりました。それが「eディスカバリ」です。自ら収集して開示しなければならず、提出するデータを変更したり消去したりすることはできません。違反があったと判断されれば罰金を科されたり、証拠改ざんの疑いで裁判でも不利になることもあります。
このように、米国訴訟においてeディスカバリへの備えを怠ることは大きなリスクですが、日本の企業はまだまだ対策が遅れているのが現状です。
米国訴訟の流れ
アメリカで訴訟が起きた際、「トライアル」と呼ばれる裁判所による事実審理が行われる前に、「プリトライアル」と呼ばれる当事者同士で話し合いの場を持つことが要求されます。このとき行われるのが「ディスカバリ」、すなわち証拠開示手続きであり、米国訴訟の大きな特徴です。
トライアルの前にディスカバリを行って証拠を相互に開示することで、原告・被告の両方が事実を正しく認識し、できるだけ当事者同士で解決する、すなわち和解させることがこの制度の狙いといえます。
そもそもアメリカでの訴訟においては、トライアルまで進むこと自体が少なく、その前段階であるプリトライアルの段階で和解するか、「サマリージャッジメント」と呼ばれる公判なしの略式判決によって終結する事案がほとんどです。このように、アメリカの訴訟においてディスカバリは訴訟の行方を左右する重要な手続きです。なかでも、IT化の進んだ現代では電子データを対象とした「eディスカバリ」が占める割合は大きく、eディスカバリを制すものが米国訴訟を制すといっても過言ではないのが現状です。
eディスカバリで情報開示が必要になるデータ範囲
eディスカバリの対象はメールだけでなく、ショートメッセージ、SNS、オンライン文書、データベース、社内アプリケーション、ウェブサイトのコンテンツなど、あらゆる電子情報から得られるデータが含まれます。
企業秘密であっても原則として提出しなければなりませんし、過去に遡って提出を求められることもあります。データやコンテンツも国内のサーバーにしか保存していない日本企業であってもデータの提出は必要で、英語への翻訳を求められる場合も多々あります。
日本企業におけるeディスカバリ対策の重要性
自動車や半導体などのメーカーを中心に、日本企業が国際訴訟に巻き込まれるケースは少なくありません。米国とビジネス上のやり取りのある企業なら、どの会社も訴訟を起こされる可能性がありますし、当事者としてだけでなく、子会社が訴えられた訴訟に巻き込まれる、またはその逆ということも十分に考えられます。
グローバル化の現代、国際訴訟は他人事ではありません。また、米国は伝統的に「経済的に余裕のある加害者は、そうではない被害者に多少の救済をほどこすべきだ」という考え方があります。心証が大きく作用しがちな陪審裁判では通りやすいとされる考え方で、原告側も本来なら複数の者から金銭賠償を要求したいところを、ディープポケット(deep pocket)と呼ばれる、十分な資金力を持った相手に絞って金銭賠償の訴訟を提起します。
日本企業はまさにこのディープポケットであり、かつ米国訴訟の仕組みにも慣れていないため、提訴される危険性を常にはらんでいます。日本企業こそ、eディスカバリ対策が必須といえるでしょう。
eディスカバリの準備不足や対応ミスが招くリスク
訴訟に巻き込まれると、短期間で関連文書やデータを提出しなければなりません。提出にあたっては、情報の特定、保全・収集・分析といった作業が必要になります。速やかに行うには平時からの準備が欠かせません。最初の対応を誤ってしまうと、データ保全を適切に行えず、企業側が事実をつかめずに合理的な戦略を立てられないという事態に陥ります。それによりコストが余計にかかるケースもあります。
実際に日本の某製薬会社が糖尿病治療薬を巡る米国訴訟において、eディスカバリで要求された情報が破棄されていたことから証拠隠滅を疑われ、約6200億円という巨額の賠償金を請求される事態に陥りました。
eディスカバリのワークフロー「EDRM」とは
eディスカバリ対策において、知っておくべき重要な要素が「EDRM」です。EDRMとは、The Electronic Discovery Reference Modelの略で「電子情報開示参考モデル」を意味するeディスカバリを実施する上でのワークフローです。
平時における備えとしての「情報ガバナンス」からはじまり、有事の際には対象データ「特定」し、削除・変更しないように「保全」したうえで「収集」を実施。重複の削除やデータの絞り込みといった「処理」を行い、訴訟に必要なものだけを抽出して「分析」します。そして専門家による「閲覧」を経てレポートを「作成」。それを開示する「提出」に至るまで、計9項目によって構成されています。
eディスカバリ支援サービスの導入メリット
eディスカバリ対策には、最適な支援サービスを導入することをおすすめします。以下、そのメリットを解説します。
EDRM作業の効率化とコスト削減
eディスカバリ対策は、世界標準のワークフローであるEDRMに則って行います。EDRMを理解すれば社内のリソースでも対応できる、と思われる方もいるかもしれません。しかし、実際はメールだけではなくメッセージやオンライン文書、コンテンツなど、あらゆる電子情報から得られるデータが含まれるため範囲が広く、思っている以上に膨大なデータ量になります。
企業が一度に抱える訴訟案件は一つとは限らず、複数を同時に対応する場合もあります。専門的な知識や翻訳も必要ですし、あらゆる種類の証拠書類を効率的にチェックするレビューソフトウェアも必須といえます。とても普段の業務をしながら社内で対応できるものではないでしょう。
支援サービスを利用すれば、9項目にわたるEDRMのプロセスにも効率よく対応できます。とくにeディスカバリの大多数を占めるといわれる、ドキュメントレビューにおいて、大量の電子データから必要な情報だけを抽出するノウハウ、技術を持つ支援サービスを使うことで、大幅にコストを削減することができます。
スピーディーな訴訟準備
平時の情報ガバメンスの充実だけでなく、有事の際のデータ保全や収集に素早く対応できることもメリットです。世界標準のワークフローであるEDRMを、ワンストップでスピーディーに回すことで突然の訴訟にも迅速に対応できるので、裁判を有利に進める可能性が増えます。
正確かつ迅速な証拠提出
対象データの保全・収集も大切ですが、いかに早く正確に証拠文書を提出できるかがポイントです。サービスベンダーによって、誤った判断の可能性がある文書を特定するソフトウェアを用いたり、検索や抽出をAIに任せたりすることで、正確で迅速に証拠文書を提出することができます。
信頼できるeディスカバリベンダーを見分ける方法
eディスカバリ対策には、支援サービスを使うのが現実的です。信頼できるベンダーを見分ける方法を紹介します。
eディスカバリの経験と専門知識が十分にあるか
国内外を問わず、どのような企業の、どのような案件を手掛けたかを確認しましょう。手がけた実績の数がそのままノウハウとなり、低コストで高品質な支援につながります。日本企業における実績も重要です。「eディスカバリは米国の制度だから米国で実績のあるベンダーの方が有利なのでは」と思うかもしれませんが、むしろ日本の組織や企業の慣習、ワークスタイルなどに対して十分な理解を持っているベンダーの方が、こちらのストレスは圧倒的に少なくて済むでしょう。契約候補のベンダーが、日本語や日本のビジネス文化をどの程度理解しているかも忘れずに確認しておきましょう。
ツールやソフトウェアなど技術的な能力が整備されているか
経験値やノウハウと同様に、ベンダー選びで重要なのは技術力です。ツールやソフトウェアなどが整備されていることが、品質やコストに大きく影響します。eディスカバリにおいて、最も作業時間や費用がかかるのは、証拠となるデータを選別するプロセスです。
誤った判断がされた可能性がある文書を特定してくれるソフトウェアを用いたり、検索や抽出を任せられるAIなどを駆使することで、かつては数百人で数か月かかっていた作業の精度とスピードを圧倒的に改善。人件費を抑え、コストを削減できます。
データセキュリティ環境とプライバシー対応は万全か
膨大な量のデータを扱う場合、オンラインツールを用いてディスカバリ作業を行うことが多くなります。オンラインツールによる作業まで、すべての行程を一貫して自社で行っているベンダーならば問題ありませんが、このオンラインツール作業だけを他社に外注している場合は注意が必要。その場合、大切な訴訟データが全く知らない会社に渡ってしまうことを意味します。また、海外にデータを送ると情報漏洩リスクが高まるため、日本国内にデータホスティングのための自社設備やデータ処理施設があるかもチェックしたいところ。
コスト・単価が適正かどうか
ディスカバリ費用のなかで最も大きな割合を占めるのはデータのレビュー費用です。レビュー費用の見積もりには、多くの場合データ容量あたりの「単価」が提示されていますが、この単価だけでベンダーを選定するのは早計です。単価の算出根拠が「解凍前データ」なのか、「解凍後データ」なのかによって、トータルコストが大きく変わってくるからです。
大抵「解凍後データ」を前提としたベンダーのほうが、単価を低く設定しているため、そちらを選びがちですが、ファイル総数は解凍前より解凍後のほうが大幅に増えます。トータルコストで考えると、単価の高い「解凍前データ」のベンダーのほうが安くなるケースが多いのです。
同様の例で、単価が安くても「キーワードで絞り込む前のデータ」が算出根拠になっているケースもあります。単価に惑わされず、作業内容をしっかりと説明して、最終的な予想金額を提示してくれるベンダーを選ぶべきです。
困ったときに相談できるカスタマーサービスとサポート体制が充実しているか
日本とアメリカとの間には時差があります。メールを送っても返信は12時間後、電話をかけてもつながらない、というベンダーではスピードが命の米国訴訟を戦いぬくことはできません。グローバル対応が可能か、スピーディーなサービス提供がされているかどうかも重要な判断材料です。
FRONTEOのeディスカバリ支援サービスなら
FRONTEOは、2003年の創業当時から国際訴訟・不正調査の日本におけるパイオニアとして、さまざまな企業の課題解決に取り組んできました。とくにeディスカバリ支援サービスは、世界標準のワークフローであるEDRMの全プロセスにワンストップで対応しており、これまでに関わったディスカバリ案件は8500件と、抜きんでた経験に基づく技術とノウハウには定評があります。
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