トピック解説/コラム

ディスカバリ入門(4/7):日本企業が安心して利用できるベンダーを見極める13の質問

ディスカバリ入門(2/7):ディスカバリベンター選定に欠かせない3つの質問」では、日本の企業にふさわしいディスカバリベンダーの条件について述べましたが、もっと簡単に「見極め」る方法があります。契約候補となるベンダーに対し、ディスカバリ経験を尋ねるというものです。

どのような業種であっても、「経験から蓄積されたノウハウ」が、後の事業展開に大きく役立つことは言うまでもありません。特にディスカバリにおいては経験値が非常に重要になります。なぜなら、ディスカバリはひとつひとつの案件の内容が異なるため、要求されるスキルや対応力も案件ごとに変わってくるからです。

たとえそのベンダーが高精度なソフトウェアを持っていたとしても、それを使いこなす担当者がディスカバリの手続きやマネジメントに長けていなければ、クライアントが無駄な作業を強いられたり、ディスカバリそのものの効率が落ちたりすることが多くなり、余計な費用が必要となってしまうでしょう。

では、ベンダーの経験値を測るにはどのような質問を投げかけたらよいでしょうか。

 

日本企業が安心して利用できるディスカバリベンダーを見極める13の質問

 

(1) これまでの実績

国内外を問わず、どのような企業のどのような案件を手掛けたかを尋ねましょう。手がけた実績の数がそのままノウハウとなり、低コストで高品質なディスカバリ支援につながっていきます。実績の多さは重要なポイントといえるでしょう。

 

(2) ディスカバリ案件を進めるうえで経験したアクシデントや障害

様々な企業のディスカバリを手掛けていれば、アクシデントや障害の一つや二つは経験するものです。データの保管方法や使用しているソフトウェアは企業によって異なるため、ディスカバリのプロジェクトでは常にカスタマイズが求められます。そのため、アクシデントや障害が起こった背景について聞くことは、その企業の技術力を測る目安となり、経験したアクシデントや障害は、そのままそのベンダーの経験値として考えることができます。

 

(3) アクシデントを解決するために講じた解決策

アクシデントを解決するためにベンダー自身が何を考え、どのような策を講じたかを知ることで、ベンダーのトラブルへの対応力を測ることができます。また、そこから責任感もおのずと見えてきます。

 

(4) その結果はどうだったか

最終的な結果を確認することも必須です。案件によっては、納期を伸ばさざるをえなかったり、工数の増加により追加の費用が必要になってしまったりという結果もあるでしょう。そういった結果に対する担当者の考え方を知ることでそのベンダーの価値観を推し量ることができます。

 

(5) 日本企業におけるディスカバリの実績

アメリカで様々なディスカバリの実績を持っていても、日本での実績がまったくないというのでは心もとなく思えます。「ディスカバリは米国の制度だから米国のベンダーの方が有利」という考えは、アジア企業においては当てはまらないことが多く、むしろ日本の組織や企業の慣習、ワークスタイルなどに対しても十分な理解を持っているベンダーの方が、法務担当者のストレスは圧倒的に少なくて済むはずです。契約候補となるベンダーが、日本語や日本のビジネス文化をどの程度理解しているかも忘れずに確認しておきたいところです。

 

(6) ディスカバリ全体の手法について、独自の提案(proposal)があるか

もしベンダーが独自の提案を何も持っていない場合、市販のツールだけを使っていたり、単にディスカバリツールを販売している代理店にすぎない可能性が高く、外部に再委託している「丸投げベンダー」である可能性もあります。どのビジネスでも競合他社との差別化を謳えないベンダーは頼りにならないものです。

 

ここまでの6つの質問で満足いく回答が得られなければ、契約を急がないほうがよいでしょう。しっかり探せば、必ず理想的なディスカバリベンダーは見つかるからです。

訴訟対応に追われ、時間がない中だからこそベンダー選定は慎重に行うべきです。ベンダー選定ひとつで、ディスカバリにかかる費用・時間ともに大幅に変わってしまいます。

もし、ここまでの質問でひとまず納得を得られたら、次は、ベンダーのサービス内容が自分たちのニーズに合っているかどうかを確かめる必要があります。ここからはそれを確認するのに役立つ質問を紹介していきます。

 

(7) 日本の企業文化を理解したサービス設計になっているか

グローバル化が進んだ今も、日本ならではの商習慣はあります。また、同じ日本でも、社風やワークフロー、書類の書き方など企業によって異なります。そういった事情を理解しているベンダーを選ぶと仕事が進めやすいでしょう。ディスカバリの支援システムやサービスを、日本のスタッフにより設計・運用し日々改良を重ねているベンダーなどは、日本の企業文化を理解していると考えられます。

 

(8) 日本語文書を高精度で分析するためにどのような工夫をしているか

日本語をはじめとするアジア言語は英語と比べると文字種が多く、漢字、ひらがな、カタカナ、算用数字、漢数字、英単語などが混在します。また、単語ごとに区切りをつけるようなことをされないので、正しく検索するためには技術が必要です。この「技術」には、システムに搭載した検索エンジンの精度に加えて技術者(ディスカバリのオペレーター)の経験値も含まれます。例えば、キーワード検索のときにどのようなキーワードで検索をかけるかなどは、基本的に弁護士の監督下で検討されますが、多くのディスカバリを経験している技術者の方が多くのノウハウを持っている場合もあります。

また、日本語には文字コードがたくさんあるために文字化けが発生しやすく(欧文文書ではほとんど発生しない)、ベンダーや弁護士によっては、「アジア言語は必ず文字化けする」と言い切る人もいるくらいです。しかし文字化けは日本語を解析するための準備を適切に行うことで、ほぼゼロにできます。

文字化けが発生してしまうと、レビュー作業を進めることができなくなります。

技術力・日本語処理能力の低いベンダーでは、そういったトラブルに対応するために、信じられないことに元データをそのまま画像化して処理する「Tiff焼き」と言われる作業を行うこともありますが、これには、本来なら不要な、多くの時間と膨大なコストが必要となってしまいます(詳細はディスカバリ入門6/7参照)。

そのため、文字化けを防ぎ、正しく日本語を解析するための対応として、ベンダーでどのような策を講じているのか確認しておきたいところです。

 

キーワード検索のノウハウは、ディスカバリ支援の専門家/証拠取り扱いのプロフェッショナルが持っている
多言語対応 英語、日本語、韓国語、中国語
ブーリアン検索 AND, OR, NOT
()によるグループ検索 例)東京で行われた会議について検索したい場合、様々な組み合わせで検索

(東京 or Tokyo トウキョウ or とうきょう)and(会議 or ミーティング or 打ち合わせ or meeting or MTG)

近傍検索 例)30文字以内に「検索」「可能」「記号」というキーワードがある場合を検索

N30{“検索””可能””記号”}

※出現順序を指定することも可能

正規表現検索 例)「東京都」でない「京都」の検索

R”[^東]京都”

例)「1112」でも「2111」でもない「111」の検索

R”[^0-9]111[^0-9]”

 

(9) データホスティングのクラウドサービスを自社でサポートしているか

データが膨大な量になる場合、オンラインの証拠閲覧ツールを用いてディスカバリ作業を行うことが多く見られます。こうしたサービスまで一貫して行えるベンダーであれば、ミスを減らすと同時にスピードが上がり、コストも下がります。

ただし、自社でそういったサービスを提供しているわけではなく、その部分のみ他社に外注している場合、これは、大切な訴訟データが全く知らない第三者(社)に渡ってしまうことを意味します。そのため、クラウドサービスを提供しているのかどうか、またそのサポートもベンダー自身が行うのかどうかも確認することが不可欠となります。

 

(10) 日本にデータホスティングのための自社設備を有しているか

海外でデータホスティングをしている場合は、情報セキュリティの観点から、取引を慎重に判断する必要があります。海外にデータを送る場合には、どうしても情報漏洩リスクが高まるからです。

 

(11) 日本にデータ処理施設を有しているか

9,10の質問に当てはまらないということは、データ処理の設備が他社ならびに海外にしかないということになり、データ流出の危険性はより高まります。仮に目の前の担当者が「大丈夫です」と断言したとしても、実際に証拠となるデータを扱うのはその担当者ではなく、「大丈夫」と断言した人以外の、知らない誰かなのです。

 

(12) プロジェクトマネージャーの経験値

これは説明するまでもないでしょう。プロジェクトの成功・不成功の鍵を握るのは、プロジェクトマネージャーです。ディスカバリは案件ごとに求められる証拠の量や提出形式が異なり、想定外のトラブルも常時発生するものです。経験豊富な人物がプロジェクトマネージャーでなければ、それらのトラブルに的確に対応することはできません。

 

(13) プロジェクトマネージャーはグローバルに配置されているか(24時間の対応が可能か)

日本と海外との間には時差があります。いったんディスカバリのプロセスが始まると、メールを送っても返信は12時間後、電話をかけてもつながらない、ということではスピードが命のディスカバリを戦いぬくことはできません。グローバル対応が可能か、また、24時間体制でサービスが提供されているかも重要な判断材料となります。

 

 

上記のような質問をベンダーに投げかければ、おのずとサービスの品質は見えてきます。もし、ディスカバリツールなどソフトウェアの特長は詳しく説明するのに、話がソフトウェアやシステム以外のこと、例えばディスカバリに必要な実務上のノウハウのことに及ぶと、急に無口になってしまうようなベンダーに遭遇した場合は要注意です。

そうしたベンダーでは、ノウハウが蓄積されていない、と判断してもあながち間違いではありません。その場合は落ち着いて、他のベンダーを探した方がより良い結果となることも多いのです。

 

質問一覧

  1. これまでの実績
  2. ディスカバリ案件を進めるうえで経験したアクシデントや障害
  3. アクシデントを解決するために講じた解決策
  4. その結果はどうだったか
  5. 日本企業におけるディスカバリの実績
  6. ディスカバリ全体の手法について、独自の提案(proposal)があるか
  7. 日本の企業文化を理解したサービス設計になっているか
  8. 日本語の文書を高精度で分析するためにどのような工夫をしているか
  9. データホスティングのクラウドサービスを自社でサポートしているか
  10. 日本にデータホスティングのための自社設備を有しているか
  11. 日本にデータ処理施設を有しているか
  12. プロジェクトマネージャーの経験値
  13. プロジェクトマネージャーはグローバルに配置されているか(24時間の対応が可能か)

 

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