戦略法務とは?臨床法務や予防法務との違いや具体例、求められる資質を解説
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2023年10月2日企業における法務のひとつ「予防法務」の具体的な業務内容や、予防法務担当者に求められる資質などに関して詳しく説明します。戦略法務や臨床法務との違いや業務の具体例など、将来のキャリアアップ、スキルアップ、また弁護士への相談のヒントとなる情報もご紹介します。
予防法務とは、紛争を避けるために事前に対策を行う法務活動
予防法務とは、会社が法的紛争やトラブルに巻き込まれ深刻な被害を受ける前に、それを未然に防ぐことを目的とした法務のこと。企業活動でおこりうる契約、労務、知的財産、法令違反などさまざまなトラブルを想定し、発生を防ぐとともに、発生した場合でもすみやかに解決できる準備を整えておくのが任務です。締結前の契約書のチェックやコンプライアンス体制の強化など業務は多岐にわたり、将来発生する可能性がある紛争、不祥事、クレームなどさまざまな法的なリスクに対し、事前に必要な対応策を講じる法務活動が予防法務の活動です。
予防法務の重要性
紛争の防止やリスクヘッジのための予防法務は、法務の中でもとりわけ重要度が高いとされています。その理由として、紛争を未然に回避することで紛争解決のために会社のリソースを割かずに済む、紛争が起きた際も会社の損害を最小限に抑えられる、といった点が挙げられます。
予防法務が整備されていない企業では、トラブルが起きてから対処に追われることになります。急きょ紛争解決に割かなければならない労力は膨大。紛争が起きてから弁護士に依頼しても限られた時間では最適な結果にはたどり着けない可能性が大きく、裁判になれば解決までの時間もかかり、弁護士費用はもちろん、裁判で多額の賠償金を請求されるケースもあります。事前に準備をしておくことで紛争の早期解決と最善の解決策を導きだすことができます。
予防法務と臨床法務・戦略法務の違い
企業活動に関わる法務は「臨床法務」「予防法務」「戦略法務」の3つに分類されます。それぞれの業務について説明しながら、予防法務との違いを解説します。
臨床法務とは、すでに発生している紛争や裁判に対処する法務活動
紛争を未然に防ぐための予防法務に対して、臨床法務はすでに起きてしまった紛争への対応を行う法務。法的理論や原則はもちろん、さまざまな事例に基づいて法的なアプローチを検討し、具体的な案を提案しつつ問題解決に取り組みます。最大の目的は、会社の損失を最小限に抑えること。紛争が長引き大きくなると損害も甚大になります。外部弁護士と適切に連携・役割分担を行い、迅速な法的紛争・トラブルの解決を目指します。
戦略法務とは、経営戦略に法的知識を生かす法務活動
企業のビジネス戦略を法務の立場からサポートするのが戦略法務。会社の事業戦略を法的に問題ない形で実現に導くのが使命です。新規事業の立ち上げや海外進出、M&Aや企業間提携のサポートなど、複雑な業務も多い重要な法務活動。経営陣や取引相手と協力しながら、自社の成長につながる新たな価値を生み出すために貢献するのが戦略法務の業務です。
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予防法務の具体的な業務内容
契約書や規則の作成、社内の体制の整備など、予防法務の具体的な業務内容を紹介します。予防法務の職務内容は、主に社外向けの業務と社内向けの業務とに分かれます。
契約書の作成・リーガルチェック
社外向けの職務として代表的なのが契約書に関する業務。他社との間で取引を行う場合、事前に契約書の締結が不可欠になります。取引条件やリスク分配、トラブル対応などの観点で締結前の契約書の中身を審査したり、ゼロから契約書を作成したりするのも予防法務の業務です。
株主総会の準備・対応
株主総会を適切な形で運営するのも予防法務の業務のひとつ。株主総会の目的である決議がスムーズに執り行えるように、総会自体を法令に沿って正しく進められるよう準備していきます。株主総会が紛糾して議事進行が妨げられないように想定問答集を用意するのも大切です。
社内規程の審査・作成
自社に適した社内規程を設けて、不祥事のリスクを低減することが目的。各社さまざまな社内規定がありますが、最近ではハラスメント規定、ソーシャルメディア利用規定等が多く聞かれます。ハラスメント規定は、社内の各種ハラスメントを防ぐため、ハラスメントの定義、禁止事項を具体化。ソーシャルメディア利用規定は、社員による不用意なSNS炎上を防ぐため、SNS上での禁止事項を明文化するなど、さまざまなトラブルを想定して、予防するために規定を作成していきます。
コンプライアンス体制の整備
社員が各種法令を遵守する重要性を周知徹底し、法的教育の機会を設けたり、社内承認フローのダブルチェック体制を構築したりと、コンプライアンス遵守のための社内環境を整備します。
知的財産権に関する事前調査
商標権や特許権、著作権など知的財産権の分野でも予防法務が活躍します。他社から訴訟を起こされないよう、自社の製品やサービスが他社の知的財産権を侵害していないかをあらかじめチェック。自社の重要な技術などに関して他社に先に権利取得されないよう、自社ブランドについて知的財産権を取得しておくことも重要です。
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予防法務に求められる法務担当者の資質
企業法務の中でも重要な役割である予防法務の担当者として、どのような資質を備えておくとよいのでしょうか。求められる経験や資質について説明します。
企業法務の豊富な法的知識や経験を持っている
契約の審査、作成、管理に関するスキル、法的規制や基準に対する理解とコンプライアンスの意識など幅広い法的知識が求められるのが予防法務です。自社事業に関する理解とともにリスクの察知能力も必須。企業法務で豊富な経験を重ねた人材が適しているといえるでしょう。
担当領域の高度な専門性を備えている
法的知識に加えて、担当領域に関する高度な専門性も求められます。該当領域や業界の法令に深い知見を併せ持つ人が適任です。法的な問題を専門家以外の担当者にもわかりやすく伝えるコミュニケーション能力も求められます。
リスクに対する適切な分析や解決策の提案ができる
業界動向や法的変化を常に把握し、自社に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定し分析。潜在的な法的リスクを予測しつつ、適切な解決策を提案する能力が求められます。法的リスクを避けつつもビジネスの成長をサポートする解決策の提案ができる人材が適任です。
適切な予防法務を行うためには自身のスキルアップと弁護士への相談が大事
予防法務の目的は、将来的な法的トラブルを回避し、組織の健全な運営を支えること。社内の各部署からの相談などを受けた際に、社内における法的リスクをいち早く発見して検討しなければなりません。問題やトラブルを未然に回避、または最小限に抑えれば、会社にとってもコストの削減に繋がります。そのためには日ごろから最新情報に触れスキルアップを重ねる必要があります。
一方、複雑な案件で、十分な知見を客観的・専門的な立場で、専門の外部弁護士へ相談できる環境を確保しておくことも重要。最先端の法的論点をふまえたアドバイスを求めることで、タイムリーな回答を得ることができます。膨大なリサーチ量がある場合に社内だけで対応するのが難しい場合が多いので、外部弁護士のサポートは不可欠といえるでしょう。
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