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2023年9月27日予防法務とは?臨床法務や戦略法務との違い、業務内容の具体例を解説
2023年9月29日企業の法務担当というと、契約書業務や訴訟対応などがイメージしやすいですが、企業の経営戦略を支える「戦略法務」も重要な役割です。臨床法務や予防法務との違い、戦略法務の具体的な業務例や求められる資質を解説し、将来のキャリアアップ、スキルアップに役立つ情報もご紹介します。
戦略法務とは、企業の経営戦略を支える法務活動のこと
戦略法務とは、会社の経営や成長のために、法的観点から積極的に支援する法務のことです。企業が抱えている法的な問題やリスクを戦略的に管理し、ビジネス戦略や目標に合わせて法的アプローチを計画・実行するのが業務。新規事業の立ち上げ・海外進出・M&Aなどの各種取引をはじめ、目標を達成するための法的アドバイスやサポートを提供します。経営視点で企業活動の意思決定に関わり、法務スキルを活用して企業価値を最大化するために貢献することが求められます。
戦略法務が重要視されている理由
積極的なビジネスを展開する際に欠かせないのが戦略法務のサポート。戦略法務の重要度が増大している背景として、昨今の市場のグローバル化が要因のひとつとして挙げられます。海外市場にアプローチするためには進出先の国々の法規制への対応が欠かせません。海外企業と取引する中で、国内外の両方の規制を遵守する必要があるためです。
M&Aなどの合併や取引が増えたことも、戦略法務の重要性が高まっている要因のひとつです。金額の大きな取引の場合は特に慎重なリスクコントロールが求められ、法務担当者のサポートが不可欠。予測不能でスピーディな世の中の流れや、テクノロジーの進歩や未知のビジネス領域の開拓など、複雑で難解なビジネス環境では、企業内における戦略法務の機能へのニーズが高まっています。
戦略法務と臨床法務・予防法務との違い
戦略法務の内容を理解する際に対比されるのが「臨床法務」と「予防法務」。戦略法務・臨床法務・予防法務はいずれも同じ企業法務の分野ですが、取り扱う業務の領域が異なります。臨床法務や予防法務それぞれの業務内容とともに、戦略法務との違いを解説します。
臨床法務とは
臨床法務とは、会社で法的紛争・トラブルが起きた際、直接的に解決に導く法務で、すでに起きてしまった法的紛争やトラブルをできる限り自社に有利な形で解決するために活動するのが任務です。たとえば、他社から何らかの権利侵害を理由に訴えられた場合や、逆に他者から権利を侵害され訴える場合などの訴訟対応、各種クレーム対応など、企業活動に関わるあらゆる問題に対処。できるだけ会社に生じる損害を最小限に抑える方法で紛争を解決することを目的としています。
予防法務とは
有事の際に対応するのが臨床法務の業務であるのに対して、平時に対策を講じる業務がメインとなるのが予防法務。予防法務は企業法務の業務の中でも多くの部分を占めます。会社が法的紛争やトラブルに巻き込まれないための予防策を考え、巻き込まれた際の被害を最小限に抑えられるようにリスクをコントロールするのが使命。コンプライアンス問題が重要視される時代の流れで、予防法務の重要度も増しています。
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すでに紛争が起きてしまった段階で処理する臨床法務は、事後の対処となるためコストやリスクが大きくなる傾向にあります。予防法務は,このようなコストやリスクを最小化するため、紛争を阻止する対策を行いますが、予防法務が不十分な場合、同じような法的紛争が繰り返される可能性もあります。この予防法務が十分である状況で、その効果をさらに進めて経営効果の最大化をはかることを目的としているのが戦略法務です。
戦略法務の特徴と具体的な業務内容
戦略法務の業務の特徴として経営戦略の支援、知的財産権の取得・活用、新規取引関連などが挙げられます。戦略法務の業務内容は、組織のビジネス目標と法的側面を結びつけて、最適な法的戦略を提供するために行う活動。具体的な業務は組織の性質や業界によって異なりますが、代表的な業務内容について解説します。
経営戦略の支援とその業務内容
まずは経営戦略の支援。企業の中長期的なビジョンや目標を達成するために法的側面からサポートやアドバイスなどをする活動です。具体的には次のような業務内容が挙げられます。
- M&A(合併・買収)対応
M&A(合併・買収)では取り扱う金額や実施後の影響も大きいため、対象会社に関する事前調査(デューデリジェンス)が重要になります。企業再編と事業継承をスムーズに進めるのは、戦略法務の重要な任務。契約書類など膨大な資料の把握や確認など、あらゆる場面で戦略法務のサポートが不可欠となるのが企業間のM&A対応です。戦略法務の担当者は、経営者の視点に立った法務的な判断力が求められます。
- 海外展開のサポート
海外で取引を展開する場合には、日本国内の法体系にはない各種問題に直面し、英文契約書のレビューや現地法規制の調査など複雑な法的対応が必要になります。競合他社の状況やあらゆる環境面でビジネス進出に適した地域かどうかを調査し、さまざまな法的手続きを迅速に実施。現地法人の設立や社員の雇用、法務面から経営層や営業部門などを支える役割など、国内外の弁護士などと連携を取りながら、国際的な取引や海外進出をサポートする法務対応を行います。
知的財産権の取得・活用とその業務内容
企業が持つ技術やブランドなどの知的財産を法的に保護し、それをビジネスに活かすための法務活動が、「知的財産権の取得・活用」です。具体的には特許や商標の取得、著作権の活用などが挙げられます。予防法務では知的財産はあくまで保護が目的となりますが、戦略法務では、組織の価値ある資産を適切に管理・保護する支援を行いながら、自社の強みとして競争力を高めるなど、積極的に活用する姿勢が求められます。
新規取引・新規事業のリスク検討
最後に新規取引・新規事業のリスク検討について解説します。新しい取引や事業展開に際しての法的リスクを事前に検討し、それを最小限に抑えるための法務活動も重要な任務です。新規取引や新規事業に積極的に関与し、法的にサポートする業務で、具体的には契約書の作成や確認がそれにあたります。
法的トラブルを未然に防ぐ目的もあり、予防法務に近い部分もありますが、戦略法務では自社のビジネスモデルや経営方針を理解したうえで、法的リスクを予測・把握し、起こりうる懸念材料を調査しなければなりません。新規の取引先や新規事業の対象となる業界に関して法的リスクの有無をチェックし、ビジネス展開が実現可能か、手段を検討・考案します。
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戦略法務に求められる法務担当者の資質
該当する業務内容や目的を考慮し、戦略法務を担当する法務部員として求められる資質とは?持っておきたい姿勢やスキルについて解説します。
高度な法的知識と経営視点を持っている
高いレベルの法的知識に合わせて、経営的な視点を持つことが求められます。ビジネス的な視点で物事を考え、会社の成長戦略に関してソリューションを提案できる人材は戦略法務担当者として適性を持っていると言えるでしょう。
担当領域における専門性が高い
高いレベルで法的な素養を持っているのはもちろんのこと、戦略法務担当者は所属する企業や取り扱う領域での専門性の高さも要求されます。複雑で難解な問題が発生した際にも臨機応変な対応力が必要とされるので、企業法務を扱う弁護士や特定の業界で長く法務経験を積んだ人が適任です。
経営陣に対して建設的な意見を言える
戦略法務担当者が経営陣に対して率直な意見や建設的な考えを提示できれば、会社の成長につながる可能性が高まります。経営陣と密接に連携しながらも独立した視点で関わるためには、知識に裏付けされた的確な判断力、忌憚なき意見をぶつけられる度胸が求められます。
戦略法務の成功にはスキルアップと弁護士への相談が必要
戦略法務の業務は幅広くレベルが高いだけでなく、企業が置かれる環境や戦略によっても業務内容は異なるため、一朝一夕で身に付くものではありません。戦略法務を効果的に進めるためには、深い法的知識と豊富な経験が不可欠。日々スキルアップをしていく意識の高さも重要です。
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